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日 時 平成16年8月16日(月)・17日(火)
天候 8/16:晴れ 夜半より雨 8/17:雨 
人数 二人
行程 8/16:広河原−(大樺沢)−二股−八本歯ノコル
    北岳山頂−北岳山荘
8/17:北岳山荘−八本歯ノコル−二股−広河原
アクセス 中央自動車道 韮崎ICを越えて、双葉Jctを南アルプス方面へ。南アルプスICから夜叉神方面へ
芦安温泉の市営芦安駐車場に駐車
山梨交通バスで広河原へ
 http://yamanashikotsu.co.jp/index.html    
          (芦安−広河原¥1000)
気づいたこと(留意点)
・八本歯のコル手前は梯子の連続
・八本歯のコルから山荘までの近道は、斜面のトラバースの
 ため、足元注意。視界不良時の道迷いも注意。
・コース上に水場なし
・北岳小屋は雨天時の自炊場あり
・山梨バスは混雑時の臨時バスなし。早めに並ぶこと。

広河原のバス亭を降り、野呂側にかかる立派な吊橋を渡る(写真左)。照りつける夏の日差しが眩しい。真青な空と深い緑の世界へ飛び込んでいく感じだ。標高二位を誇る北岳は真正面から私達を見据えている。登山口に立ったときに山頂が見える山というのは、珍しいのではないか。真っ向勝負ってことですね(写真上)。
大樺沢にそってゆるやかに登っていく。きちんと整備された歩きやすい登山道だ。
大樺沢を二度渡り、登山道がガレ場になってくると、枝分かれしたルートの集合点である二俣。ガレ場の広がる場所だが、登山者で賑わう。右俣コースを辿れば、小太郎尾根から肩ノ小屋へ、斜面をトラバース気味に行けば白根御池小屋。私達は左俣コースへガレ場を登る。高度がぐんと上がり、振り返ると早川尾根の向こうに八ヶ岳が(写真左)、さらに登れば、鳳凰三山(地蔵岳)の白砂の稜線がくっきりと見えてくる(写真右)。

右手にはかの有名なバットレスが立ちはだかる(写真左)。クライマーはいないかな?あんな壁、どこをどう登るんだろうか。でも挑みたくなるような岩壁。
早川尾根が目線より低くなってくると、登ってきた大樺沢の谷が眼下に望め、出発点の広河原も遠く小さく見える(写真中央)。本当に、山頂に向って一直線の登山道だ。
バットレスの岩壁を横目に、八本歯のコルまではハシゴのオンパレード(写真右)。
木組みのハシゴがあっちこっちに取り付けられて、まるで子供のアスレチックだ。この分、あっという間に尾根に近づいた。(写真下4枚とも八本歯のコルより)

八本歯のコルは予想以上に狭い尾根の鞍部。あ〜、やっぱり南アルプスからは富士山がこんなにも近いんだ!誰にでも描ける単純な台形の山なのに、こんなにも美しいと思うのは何故だろう。
しばらく休憩していると、西のほうから黒い影が押し寄せてきた(写真右下)。
低い雲の天井のようだ。ここから北岳山荘までに近道もあるのだが、せっかくなので、山頂を踏んでいくことに。
ここからは大きな岩石をペンキ印に従って登っていく。黒い雲とともに、風も吹いてくるが視界はどこまでも開けている。吊尾根の鞍部にザックを置いて山頂をめざす。
岩石の積み重なった山頂かと思ったが、意外にちょっとした広場のようになっていて、標高第二位の山とは思えない。
地図に”展望最高”と書いてあるだけあって、南はどっしりとした間ノ岳、北は、仙丈岳・甲斐駒ケ岳が手に取れるように近い。
雲の天井が稜線に沿って波打っているのがおもしろい。
小屋に着いたころは、かなりの強風になっていた。先月の妙高山を思いおこし、あの時曲がってしまったテントを立てることはためらわれた。
・・・というより、実際にやってみると、あおられて立てられなかった。
この小屋は室内の自炊室があるのでとても助かる。裸電球が灯るコンクリートの狭い空間は異様な雰囲気だが、雨風にあたらず食事をとれるのはありがたい。今晩のおかずは、秋刀魚の蒲焼缶詰の卵とじ。とっても簡単で栄養価も高そう(?)でよく作るメニュー。
いつもなら、食事の後はつまみを食べながら一杯やるところだが、小屋泊まりは消灯時間8時というから時間がない。
大きな相部屋はすでに真っ暗、登山者全員が静かに就寝体勢。
山男たちがお酒を酌み交わして夜が更ける、なんてことは物語だけの話なのかな?
翌日は、日の出よりずっと早い時間から、騒がしくなる。今日なんて雨・風のひどい天気で御来光どころではなく、停滞したっておかしくない天候なのに、部屋のあちこちで、スーパー袋に荷物を出し入れする音がこだまして、眠っていられない。まだ寝てますよ!と言いたいところだが、寝ているのはほぼ私たちだけなので、多勢に無勢。”早発ち”は登山の原則だが、これは”早起き”。せめて朝食までは静かにして欲しいのだが・・・。
天候が良ければ、間ノ岳まで足を伸ばそうかと思ったが、この空模様。午前中のバスに間に合うように下山することにした。
八本歯のコルまでは近道であるトラバース道を辿ることにする。尾根道を見上げると青いヤッケを着た登山者が岩にへばりつく様に歩いている。どうしたの?と不思議に思っていたが、なるほど。あまりの強風に立ち上がれないのだ。私達も突風に飛ばされないように猿のように低姿勢で慎重に進んでいく。足場は決して良いとは言えず、ハシゴあり、丸太で足元を固めてあったりと、気を抜けないルートだった。
八本歯の分岐まで辿りつくと、ホッと一安心。雨脚は弱くなり、ガスも晴れそうな気配だ。コル下部のハシゴを下ると、あとは一気にガレ場を通り、沢沿いを駆け抜ける。高度が下がるにつれて気温はあがり、ヤッケの中がムンムンとしてくる。広河原まで辿りついた時は、雨なのか汗なのか、全身ビッショリで気持悪い。それでも、出発点に戻ってきたときの気持はなんとも爽快だ。

広河原のバス亭は、登山者でごった返していた。どう考えても一台で乗れる人数ではないので、臨時が出るのか聞いてみると、”たぶん臨時は出ない”とのこと。あわててバス亭の列に並んだ。
これほど時代錯誤なバスは初めてで、先着順にバスに乗り込んだものの、ムギュムギュに押し込まれたバスの中で、乗務員が切符の販売を始める。当然、乗務員がバスに割り込む隙はなく、なんと切符代金は登山者から登山者へと手渡しで運ばれていくのだ。行先もバラバラだがら乗務員は混乱し、おつりもわけがわからず、本当に大丈夫???
そして恐ろしい山道へ出発。私は山岳バスと言われるバスで、立ち乗りをしたのは初めて(黒部ダムまでのトロリーバスを除く)。雨に濡れた山道を満員の登山者を乗せてユラユラと揺れながら走るバス。その恐怖とスリルはご想像におまかせします。

山行の最後で、ちょっとしたカルチャーショックを味わった。私が思うのは、”昔ながらの山の雰囲気が残る南アルプス”。 だからこそ、山小屋では昔風の山男達が酒を酌み交わして山談義に花を咲かせていてほしい、と思ってしまうのだ。(報告者:A)
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