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山行日 平成14年10月2日(水)
天 候 曇り時々晴れ
山頂気温(五ノ池小屋温度計)13時18℃/15時7℃
人 数 二人
行 程 濁河温泉P〜飛騨山頂〜摩利支天山 往復
アクセス 名古屋より国道41号線を北上 
下呂を超えて小坂町を東へ33K
濁河温泉町営P(無料)に登山案内あり
※名古屋から約4時間半かかりました
※雨量規制区間数カ所あり、事前に確認要
※東海北陸道清見ICより南下するアクセスもあり?
気づいたこと(留意点)
・秋山はどんな装備をしていくべきかいつも悩みますが・・・
 
今回の行動着(A):長袖アンダーウェア(サーモスタット)、フリース、
             ウールタイツ、パンツ、下着は全てポリ系素材、
             帽子(夏用)、手袋
 準備した装備(A):ダクロンシャツ、ウィンドブレーカー、雨具
・危険な箇所はありませんでしたが、遊歩道のように整備された木道は
 非常に滑りやすく、特に下山時は難儀しました。
・紅葉は8合目あたりが一番彩りが良く、濁河温泉周辺は10月中旬との
 こと(例年に比べて少し遅いらしい)。

・7合目手前に水場あり、また「お助け水」では水は得られませんでした。
・岐阜県からのアプローチは乗鞍岳に隠れて穂高連峰など北アルプスの
 展望はききませんでした。
1.岐阜の山深く秘境のごとし
御嶽山の裾野に広がる原生林と渓谷
 御嶽山といえば、東海地区ではスキー場としても馴染みの深い山、しかしながら東海北陸道などの開通にともなって御嶽山は言わば陸の孤島になってしまっている気がする。いまや上高地に入るよりも御嶽山麓に行く方が時間がかかるのだ。しかしながら北アルプスから望む御嶽山の堂々たる姿を見ては一度その頂に立ってみたいと思うのだった。
 10月初旬といえば高山の山腹は紅葉に染まる頃、御嶽山の紅葉がいか様なものか知らないが、原生林に囲まれながら山に登り、その後は秘湯濁河温泉へ行こう・・・とあっけなくその機会がやってきた。
 国道41号線を北上し下呂温泉を越え、しばらく進むと小坂という小さな町に辿り付く、古い民家の並ぶ町並みはいかにも奥飛騨らしく、ちょっと散歩でもしてみたくなる。ここ小坂が濁河温泉への入り口となり、ここから約40Kず〜っと山道を走ることになる。道はきちんと舗装され運転が難儀なわけではないが、すでに御嶽山の広大な裾野らしく、恐ろしくなるほどの深い森と渓谷が目の前に広がっている。長野県側の王滝村や開田高原の開放的な雰囲気とは違い粛然としている。また、御嶽山が古くから信仰の対象として修験者に登られてきたのは主に長野県側からで、その後民間人のために開かれたのもやはり王滝口や黒沢口登山道であり、同じ御嶽の山麓にありながら、こちらはそうした宗教的な顔が見えないというのも不思議な感じだった。
 6合目にある濁河温泉は歴史の古い温泉で町営露天風呂やホテル・旅館・ペンションなど10軒ほどあるが、平日のためかどこも閑散としている。温泉街をのぼりつめるとようやく登山口に到着だ。
2.森林浴を楽しむ登山道
樹林帯の木道を歩く
日帰り登山とはいえ、10月初頭の3000mに行く訳だから、装備は慎重にしなくてはならない。防寒具をしっかり持っていよいよ登り始める。案内板に従って橋を渡ると御岳神社、鳥居をくぐって階段を上ると境内の左手に登山道が続いている。昨日の雨で地面はぬかるみ、それだけなら良いのだが、ご丁寧に遊歩道っぽく木道が延々と付けられているので、多いに滑る。左手に仙人滝の看板を見て30分程登ると7合目、しだいに周りの樹々に紅葉が見られるようになる。傾斜がきつくなり右手に見える谷間が深くなってくるとのぞき岩だ。
のぞき岩からの渓谷と稜線
そうするのが正しいのか分からないが岩に登って谷間を覗いて見ると、山腹一帯がまるでクリスマスの飾り付けの様に色とりどりに染まり、谷越しにたおやかな摩利支天の山容が雲の隙間から見え隠れしている。紅葉のトンネルを楽しみながら急登すると8合目、道標にお助け水と書かれた広場に出る。その名の通り一応は水場なのであるが、ガイドブックに「涸れることが多い」とあるように、この日は水を得ることは出来なかった。岩場に荷物を背負ったまま腰を下して水分を補給する。久しぶりの山行だが、まだ疲れは感じずバテもこない。何しろこれまた久しぶりの日帰り山行だ、荷物が軽いというのは本当に楽なものである。
 しばらく登るとダケカンバの樹が目立つようになり、やがて展望が開けゴロゴロとした石の登山道となる。振り返ると7合目あたりの紅葉がまるで艶やかな帯のように山腹を取り巻いている。
 御嶽山と言っても山頂には最高峰の剣が峰・継母岳・継子岳・飛騨山頂といくつもの峰が広大に広がり、それは幾度も繰返してきたすさまじい噴火活動を物語っている。実は御嶽山の火山活動は、国内では阿蘇山、富士山に継ぐ大規模なものだそうだ。その台形の山容を眼前に黙々と高度をかせぐと、ハイマツ帯の広い尾根に取り付く。傾斜はゆるく独立峰特有の美しい裾野の広がりを眺め見ることが出来る。残念ながら雲に隠れて乗鞍岳や遠くの北アルプスは望むことが出来ない。
のぞき岩上部の紅葉 摩利支天から見る帯状の紅葉 摩利支天への尾根
3.先人達の聖なる地
 比較的新しい御岳小屋(現在は名前が変わっていた気がする・・・)の裏手に小さな祠が祭られあり、そこが飛騨山頂である。小屋の前には五ノ池が水量貧しく佇んでいて、一瞬御神水と呼ばれる三ノ池と勘違いして愕然とするが、まさかね。
摩利支天山頂にて
登頂の記念に鳥居の前の釣鐘を鳴らすと、静かな山頂に鐘の音が響き渡り荘厳な雰囲気に包まれた。
 溶岩のゴロゴロした斜面をひと登りすると、朽ち果てた祠のある剣が峰と摩利支天との分岐にでる。ここからはグリーンの湖面が美しい三ノ池を見下ろすことができる。剣が峰まではここから約1時間、今回は時間がないので摩利支天を往復することにした。賽の河原をはさんで剣が峰の向かいに位置する摩利支天までは痩せ尾根をへつるようにして歩く。登山道の周りは高山植物が赤く染まり、いっぱり実をつけている。岩に張り付くように生えているガンコウランの黒い実を口に入れると、スイカのような梨のような爽やかな酸味と甘味がしてとってもおいしい。欲張りな私はポロポロと取れる実をいっぱい集めながら山頂を目指す。
 今日はあいにくの天候で遠くの山までは見渡せないが、その分、広大な山頂にどっかりと腰を降ろす剣が峰の堂々たる姿が際立って見える。眼前の広大な窪地の賽の河原は、先人が聖地として崇拝した場所、殺伐とした一種異様な雰囲気が漂っている。手に集めたガンコウランがすっかり無くなるまで山頂での景色を楽しみ、腰を上げた。
4.最後でドジ踏んじゃった
 小屋の玄関に設置された温度計は一時間半ほど前に比べて10℃も下がっている。幸い今日は風もなく暖かな1日だったので良かったが、寒い日だったら零下になってしまう可能性だってありうる。この時期の登山の装備(ウェア)はいつも悩むところだ。何と言っても下界はまだ暖かく、衣替えだってしていないし、日中は半袖一枚で冷房をかけて運転をする日だってある。でも、とにかく上はものすごく寒いのだ!!と自分に言い聞かせて、冷房の効いた部屋でオーバーパンツや冬用ジャケットとかありったけの防寒着をザックにつめる訳である。
 登山にしてもキャンプにしても定期的に長期にわたって楽しむレジャーというのは、行く度に経験が蓄積されていくので、装備にしろ、内容にしろ、どんどんと洗練されていくはずであって、それがまた一つの楽しみとなったりする(全然学習効果のないこともあるけど)。先の、登山装備に関しては、私は毎度、持ち物リストを作成して、下山すると足りなかったものや余分だったものをメモしておく。結構なリストが溜まっているので、最近では類似した条件の過去リストを見つけて、新たに作成すればだいたい間違いはない。それに最近はとても便利な世の中になって、山小屋から発信される気象状況などが、リアルタイムに得られるので、是非そういう情報も参考にされたい。
 今回の山行も平日とあって、ここまでは私達の貸切登山だったが、下山途中で登ってくるパーティー2組と遭遇した。明日の朝、ご来光を山頂から拝もうという登山者だろうか?
 7合目を過ぎると、登りで難儀した木道が現れ、案の定下りはさらにてこずった。前を歩くファミリーの子供は体重が軽いからなのか、容赦なしに歩いていくが、われわれを含めた大人たちは、実に危なっかしく用心しなくてはならなかった。最後は、登山口の御岳神社に並ぶ七福神に贅沢なお願い事をして、駐車場へ。
 無事に下山できてホッとしたのもつかの間、なんとしたことか!ライトを消し忘れてバッテリーが上がってしまった。駐車場に隣接している旅館の方にお願いして充電してもらって、なんとかエンジンを回すことができたが・・・温泉街にある無料露天風呂で再び駐車するのは、ちと危険なので、今晩の宿、秋神温泉へ直行することに。
 ライト点灯の警告音が鳴らない車の方!、くれぐれも消し忘れにご注意を!       (報告者:A)

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