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日 時 平成14年6月19日(水)
留意点(気づいたこと)
・焼岳の山頂立入規制が無くなったとはいえ、いまだ噴気口から  は硫化水素などの有毒ガスを噴出しているので、要注意です。
・この行程には水場はありません(焼岳小屋にも)。必ず上高地で 水を確保することが大切です。
・中尾峠から山頂までは脆い安山岩で滑りやすく、こと下りには注 意が必要。
・展望も良いし、北アルプスの位置関係を確認するためにも、地図 とともに双眼鏡を携帯されることをお勧めします!
天 候 晴天(山頂 微風)
人 数 二人
行 程 上高地⇒焼岳⇒中尾高原
アクセス 名神小牧IC⇒一宮Jより東海北陸道へ⇒清見IC
高山を経て平湯温泉へ
平湯バスターミナルから安房峠方面へ5分
あかんだな駐車場へ(1日500円)
  ※深夜に入った場合は後払いです
名古屋から約3時間

1.朝焼けの焼岳
 下界では寝苦しい程の季節だというのに、あかんだな駐車場の気温は約7度、寒さで十分な仮眠をとることが出来ない。
 フリースを着込んでいざ出発。平湯バスターミナルまでは無料シャトルバスが運行しているので、、ターミナルで切符を購入して改めて上高地行きのバスへ乗車することになる。
 釜トンネルを越えるとまずは左手に焼岳、間近に迫る活火山特有の茶褐色の山肌はいつ見ても迫力がある。そして梓川の流れに沿ってカーブを曲がると、思わず歓喜の声を上げたくなる大正池と穂高岳。鏡のような大正池に逆さの穂高岳が美しく映っている。近年の大正池の変貌を嘆く人は多いが、やはりこの山並みとのコントラストはため息がこぼれる。
 今回は上高地まで行かずに帝国ホテル前でバスを降りる。ホテル横の道を歩き田代橋を渡った突き当りが西穂登山口との分岐、焼岳へは道を左に折れる。正面に目指す焼岳を眺め、森の鳥たちのオーケストラを楽しみながら、しばらくは林道歩き。焼岳が一番美しく見えるのは明け方、朝日に赤く染まったその姿は穂高の迫力にも負けず劣らずすばらしい。
大正池から穂高連峰
2.登り応えのある登山道

大岩を梯子でトラバース
 右手に登山口の看板を見て、いよいよ登山道となる。他の登山者はおらず静かな樹林帯に足を踏み入れると、びっくりした虫達がいっせいにワサワサと舞い上がる。小さな沢を二つ程渡ると左手に峠沢を見ながら本格的な登りの始まり。
 久しぶりの山登りですぐに息が切れ始めるが、自然の香りの中で汗をかくのはとても気持ちがいい。峠沢のガレ場がどんどん深くなっていくのを眺めながら急登する。足元にはゴゼンタチバナやマイズルソウ、イワカガミが群生していて気持ちが和む。 深い樹林帯をいつのまにか抜け出すと、背後には霞沢岳のノコギリのような稜線がそびえ、眼下にはエメラルドグリーンの大正池やひときわ赤い帝国ホテルの屋根が見える。
ゴゼンタチバナ
 正面に岩壁が遮ると、ここからはしばらく梯子の連続、登山道の崩壊のためか即席で脚立を取り付けたものや、中には長い鉄梯子が湾曲していて銀河鉄道999のシーンさながらのものもあった。
 尾根上の大岩の間からにひょっこり顔を出すと、そこからは緑美しい草付の斜面が広がり、左手には焼岳が間近に迫る。「小屋まで12分」の表示を見ながら、斜面をジグザグに登っていく。
3.大展望のスペクタクル
 緑の屋根の焼岳小屋は、北アルプスとは思えない質素な小屋で、小屋番も見当たらなかった。焼岳小屋といえば、焼岳大噴火の際に小屋の人たちが毛布を被って中尾峠へ駆け下りたという話を聞いたことがある。
 確かに、この辺りからは、この山が今もなお活動し続ける火山だということを実感することができる。ところどころ岩の隙間から、白い湯気が立ち、地熱で暖かいのであろうか岩が苔むしている。北峰への斜面には大きな火山岩がゴロゴロと偶然そこに落ちた、といった感じで転がっている。この地面のずっとずっと奥深いところではマグマが轟々と生きているのであろうか。
 中尾峠展望台までやってくると、さすがにその名のとおり、西から笠が岳、遠く双六岳が見え、西鎌尾根をたどると北アルプスのシンボル槍ヶ岳が、そして正面には穂高岳連峰が悠然と構え、明神岳の尾根の向こうに蝶が岳の稜線を望むことが出来る。これから夏を迎えようとしている山々のは、3000mの山肌には残雪が残り、中腹には新緑の若葉が太陽光に照らされいて山全体に活力を感じる。どれだけ眺めていても山の景色は飽きることが無い。

小さな噴気孔があちこちに
 展望台を少し下ると中尾峠(中尾高原との分岐)、そこからはいよいよ焼岳北峰へ向かい荒れたガレ場を急登することになる。硫黄の匂いを嗅ぎながらしばらく登ると、珍しい動物と対面した!それは白毛のカモシカ。これまでにもカモシカは見たことがあったが、白毛は初めて。私達と目が合っても逃げようともせずに黙々と草を食べる、連れ合いはいないものかと辺りを探したがどうやら単独行らしい。双眼鏡を取り出して覗くと、なんとカワイイ顔!とっさに双眼鏡ごしにデジカメで撮影に挑戦!(見事、拡大カモシカが撮れましたが、顔が岩にかくれて残念・・・)
 高度が上がるにつれて息が荒くなり、ゼーゼーという自分の息遣いを聞きながら登りつめると中の湯温泉からの道と合流し、北峰までは一登り、白煙を激しく上げる地獄谷さながらの黄色い噴気口の脇を通り山頂へ。山頂からは今まで隠れていた乗鞍岳・御岳、遠く南アルプスが加わり360度の大展望!!大満足!!

山頂からの展望(白山も見えました)
4.2400mでの贅沢
 おそらくシーズン中はこの山頂も人で一杯になってしまうのであろうが、今日は2・3組の登山者だけでのんびりとしている。北峰の西側には火山湖が静かにグリーンの水をたたえ、その横には噴火口が今にも何かを吐き出しそうに大きな口を開けている。
 東側の大きな岩を陣取って休憩、双眼鏡を手にとり見える範囲の山を細かくチェックしていく。この辺りの山はだいぶ登ってきたので、その頂きや稜線を指しては思い出に浸り、また次に登る山に思いを馳せる。こうして山の頂きに立つと、ちょっとした立体地図を見ているようで、アルプスの位置関係や川の流れや、距離・方向なども、とてもわかりやすい。
 昼食はお決まりのラーメン(今回は味噌)をすすり、これまた定番のサントリーオールドをチビリ。あ〜、なんでこんなにおいしいの!?
 食後はジリジリと肌が焼ける音が聞こえてきそうな日差しの中、岩の上でお昼寝。うっすらと目を開けるとそこには大自然が、目を閉じると鳥の声が・・・となれば完璧だったが、梅雨時の晴れ間とあってか荷上げのヘリが騒がしく飛び回っていた。

山頂直下の噴気口
さすがに午後になるとどこからともなく雲が広がってくる、槍ヶ岳も隠れたり現れたりと忙しく、笠ガ岳にも白い笠雲がかかり出した。山頂を去るのは名残惜しいが、バスの時間に合わせるように支度を始める。
5.樹林帯の下山
 中尾峠で中尾高原方面に左に折れるとすぐに樹林帯へと入っていく。道は細く荒れ気味で、入山者が少ないのであろうか、くもの巣が顔にかかる。しばらく下りフラットな広場に出ると、秀綱神社があり、立派な鳥居の向こうには大きな岩に祠が祭ってあった。その昔、この登山道から信州へ峠越えをした時に祭られたものらしい。手を合わせて登山の無事を祈った。
 樹林の間から見える笠が岳が見る見るうちに高くなっていくにしたがって、気温も上がり汗が出てくる。この登山道はひたすら樹林帯をジグザグに歩くコース、真夏の登りにはあまり利用したくない。信州側よりも花の時期は遅い様で、ゴザンタチバナもまだ花開いていなかった。
 ときおり見える中尾高原のペンション郡はまだはるか下の方にあり、少々うんざりするが、毎度歩行数を数えて距離を測っているパートナーは「もうすぐ、もうすぐ」と余裕綽々。途中から車道と合流し、中尾高原口のバス亭までは3Kほどのアスファルト歩きとなる。高原という名にふさわしいペンションが点在し、道の側溝には温泉が流れ出している。
 中尾高原バス停からは今しがた下りてきた尾根と焼岳が望め、北には槍ヶ岳が意外に近くに見える。バスを待ちながら今日の山行の余韻に浸る。目を閉じると、そこには2400mからの大展望が広がっていた。
(報告者:A)

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